シャワー美人の部屋に勝負師の部屋の鍵があった謎
ふせったーより転載、加筆修正。原作だと「このオバケ倒すとどうしてこの部屋の鍵が手に入るの?」案件はそこそこあるけど、ここの繋がりも中々不思議だなって思ったので。考察ではありません。妄想です。
「実のところ、わたしたちって似た者同士なのかもね」
「アンタがそう言うなら、俺も胸を張って主張できるな。実体のないものに愛されると碌な目に遭わない。……まあ、愛は貰えるだけ貰ったつもりではあるが」
「わたし、あなたのそういうところは好きになれないわ」
「そりゃそうだ、俺もアンタのことは好きじゃない」
「ああ、同族嫌悪ってやつ?」
「まさか! アンタほどの
共通点:人でないもの(概念)に愛され、そのせいでロクな目に遭わなかった人間である。
ブーニャちゃんは、素性不明のモデルとして人気を誇った女性。その愛されっぷりは、当時から時代の寵児と呼ばれるほど。
ポール兄さんは、賭け事において絶対無敗を誇った男性。その豪運っぷりは、運命の女神に愛されていると自他共に認めるほど。
時代も、運命の女神も、実際に見ることも出来なければ、意のままに操ることもできない。むしろ人間たるこちらが翻弄されるのみ。
そして、そういった無形のものに愛された人は、大概人間関係がロクなことにならない。
ブーニャちゃんの周りに群がる人は玉石混交。本人の人柄もあって、友人は多い方だった。それでも「素性不明」の律を破らないために、親しい付き合いはほとんどしてこなかった。それによって流言飛語も誹謗中傷も飛び交ったけど、ひとつも余すことなく受け止めた。許さなかったのは、自分の夢を全面的に阻害してくる者だけだった。
ポール兄さんの周りにまともな人間はほとんどいなかった。男も女も溢れていたけど、誰一人として信じていなかった。信じられるのは自分だけ。誰かに心を許そうものなら、取って食われてお終い。上辺だけの関係ばかりを築き、簡単に切れる縁だけを結んだ。唯一心を許した女性には裏切られ、最後には自分さえも信じられなくなった。
二人は紆余曲折あって自ら死を選び、数年の時を経て初めて顔を合わせた。生前の境遇を互いに理解し、共感した。境遇の共感はとても強いものだった――人でないものに翻弄される人生を歩むのは、ほんのひと握りの人間だけだから。
とはいえ別段仲が良いわけではない。ポール兄さんにとってアルプさんとの仲を超える幽霊なんているわけがないし、ブーニャちゃんはババーラおばあちゃんの方が仲良しと言えるくらい(※うちのブーニャちゃんとおばあちゃんは普通に仲良しです。おばあちゃんがちょいちょい悪戯するけど、ブーニャちゃんがすぐに水に流すのであまり拗れない)。
心を預け合うなんてこと、するわけがない。そういう境遇であったことを互いに知っている。
信頼も別にしてはいない。そこまで彼/彼女に傾倒はしていない。
ただ信用できること。二人にとっては、それだけで良かった。
生前からずっと第三者の目で見てきて、境遇も分かっている、芯の強い明け透けな女。
彼女のことは個人的には苦手だった――生きる世界が違うと思っていたし、天真爛漫の皮を被った聡明な女性は対応に困る――けども、それは信用とは関係ない。
彼女は強い信念を持っていて、それに外れる行為をしない。生前から死後までの彼女を見ていればそれは明らかだ。強くはないけど強かだし、豚状態ならそれなりに健闘してくれるかもしれない。
負けてしまったらそれまでと思って、勝負師はシャワー美人に鍵を預けた。
結局、賭けにならないほど強力な掃除機が現れてしまうわけだけど。